●大学在学中に資格取得に挑戦しよう!そういえば、生協で「行政書士」のチラシを見かけたけど、行政書士って何?
●社内のキャリアアップや自己啓発のため、法律の知識を学びたい!ところで、行政書士のほかにもいろいろな資格があるけど、何が違うの?
●専業主婦だけど専門知識を身につけて人の役に立ちたい!でも、行政書士って名前は聞いたことあるけど、イメージがわかない……
これから挑戦する資格選びはとても重要です。資格選びを間違えてしまうと「頑張って勉強して合格したのに、資格が役に立たない」という状況に陥ってしまうことがあります。
多くの難関といわれる国家資格の試験のチャンスは年に1回だけです。資格選びを間違えてしまうと1年を棒に振ることになります。
行政書士試験に合格することはすごいことですが、貴重な時間やお金を無駄にして欲しくありません。みなさんには、行政書士とはどういうものなのかを理解した上で、資格取得に挑戦して欲しいです。
そこでこの記事では、これから行政書士の資格取得に挑戦しようとしている方に向け、行政書士の仕事内容や行政書士と司法書士の違い、行政書士に向いている人などを解説します。
この記事を読めば、「行政書士」に対する理解が深まり、イメージとのギャップが解消できます。
行政書士の仕事内容は、
⓵官公署に提出する書類などの作成業務(書類作成)
⓶官公署への書類提出手続きの代理業務(提出代行)
⓷相談業務(コンサル)
です。
行政書士は、「頼れる街の法律家」として、社会の役に立つ魅力のある仕事をしています。
行政書士に興味のある人はぜひ最後まで読んでください。
行政書士の仕事内容は書類の作成・書類提出の代理・法律の相談
行政書士とは、法律に関する手続きや書類作成、代理申請を行うことが主な業務です。
種類は1万種類を超えるとも言われています。種類が多いため、行政書士により専門分野、守備範囲が異なります。専門性を磨き、自分の強みを活かして活躍している行政書士も少なくありません。
他にも、一定の法律知識を有しているため、法律相談も受け付けることができます。
ちなみに、行政書士法には、次のように行政書士の独占業務について書いてあります。
(業務)
行政書士法|e-Gov法令検索
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
第一条の三 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。次号において同じ。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。
二 前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
三 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
2 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。
官公署に提出する書類などの作成業務
行政書士は、法律に関する専門的な知識に基づき、主に許認可(許可・認可)に関する書類を作成することができます。
行政書士の書類作成業務には、具体的に以下のようなものがあります。
●主な仕事(例)
・官公署に提出する書類の作成(運送業、建設業、飲食店の許可申請書の作成)
・権利義務に関する書類の作成(契約書、遺言書、遺産分割協議書の作成)
・事実証明に関する書類の作成(内容証明郵便、公正証書、和解書の作成)
官公署に提出する書類などの代理業務
行政書士は、専門的な知識や経験を活かし、法的問題を解決するために必要な書類提出を代理することができます。
行政書士の書類提出代理業務には、具体的に以下のようなものがあります。
●主な仕事(例)
・自動車登録(ナンバー変更・名義変更)
・日本国籍取得(帰化申請)
・土地活用(農地転用許可申請)
・外国人雇用(在留資格認定証明書交付申請)
・法人設立(会社設立申請)
相談業務
行政書士の相談業務には、主に暮らしに役立つ相談とビジネスに関する相談があります。
暮らしに役立つ相談
行政書士ができる暮らしに役立つ相談には、具体的に以下のようなものがあります。
●主な仕事(例)
・遺言や相続に関する相談
・契約書作成の相談
・国際結婚の相談
・消費者トラブルの相談
・不動産に関する相談
ビジネスに関する相談
行政書士ができるビジネスに関する相談には、具体的に以下のようなものがあります。
●主な仕事(例)
・会社設立に関するアドバイス
・介護福祉事業の開業に関するアドバイス
・外国人の労働に関するアドバイス
・中小企業の資金に関するアドバイス
・著作権に関するアドバイス
特定行政書士
行政書士は、「特定行政書士」として、行政不服審査法に基づいた不服申し立ての手続きをすることもできます。
特定行政書士の仕事内容には、具体的に以下のようなものがあります。
●主な仕事(例)
①審査請求:行政の処分に対して不服がある、行政の不作為による未処分に対する審査請求
②再調査請求:行政の処分に対して処分の見直しを求める請求
③再審査請求:棄却裁決された審査請求に対して再審査を求める請求
これまで弁護士の独占業務であった不服申し立ての手続きを、平成26年の行政書士法の改正により行政書士も研修を積むことで「特定行政書士」として登録できるようになりました。
普通の「行政書士」から特別な「特定行政書士」になることで、仕事の幅を広げ、スキルアップ、案件獲得につながります。
他の国家資格との違いは業務内容と守備範囲
行政書士と他の国家資格との違いは、当たり前ですが、業務内容と守備範囲にあります。
行政書士は、法律に関する手続きや書類作成、代理申請を専門的に行います。
他の国家資格と比べると、弁護士は裁判所、司法書士は法務局、社会保険労務士は労働基準監督署、税理士は税務署が主なお得意先であることに対し、行政書士はいろいろな行政機関とタッグを組んで仕事をすることができます。
それぞれの資格には、それぞれの特徴があり、異なる分野で専門性を発揮しています。
弁護士
・訴訟手続きや司法手続き、法律相談などを専門的に行います。
・法律の専門知識を持っているため、裁判所での証言や法廷弁論などを行うことができます。
・法律の専門家であり、法律問題に対する専門的なアドバイスを提供することができます。
司法書士
・登記、供託に関する手続きを行います。
・裁判所の書類の作成や、公正証書の作成、登記手続き、相続手続きの代理など、法律に関する様々な手続きを行います。
・行政書士と同様に法律に関する手続きや書類作成を専門的に行うことができますが、行政書士と異なり、法務局への登記手続きや裁判所での手続きも行うことができます。
社会保険労務士
・労働法や社会保険法に関する専門的な知識を持ち、企業や個人の労働問題や社会保険制度に関する問題を解決することができます。
・雇用契約や労働条件に関する問題に対するアドバイスや助言、労働紛争に関するコンサルティング、退職金や年金に関するアドバイス、労災や健康保険に関する問題の解決など、様々な労働問題に対応することができます。
・企業の人事制度の設計や運用に関するアドバイス、人事評価や昇進制度の構築に関するアドバイス、リストラや人員削減に関するアドバイスなど、企業の人事制度に関する問題を解決することもできます。
税理士
・税務相談や税務申告、会計業務などを行います。
・税務に関する専門的な知識を持っており、個人や企業の税務相談や税務申告を代行することができます。
・企業が税務上で抱える問題に対してアドバイスを行うことができるため、企業の経営にとって重要な役割を担っています。
行政書士になると独立開業や就職・転職で幅が広がる
行政書士になることは、就職、転職、独立といった観点からも、行政書士資格は役に立たない資格ではありません。
就職・企業内でスキルを活かせる
行政書士は、官公庁や法律事務所などでの就職に有利です。行政書士の資格を持っていることで、企業内の法律に関する手続きや書類作成などの業務にスキルを活かすことができます。
転職に有利
行政書士は、法律に関する専門家としての地位を確立しているため、他職種への転職にも有利です。また、行政書士資格を持っていることで、法律に関する知識やスキルを持っていることをアピールすることができます。
独立開業が可能
行政書士は、独立して事務所を開業することもできます。行政書士は、法律に関する専門家としての知識と経験が求められる仕事であるため、専門性の高いサービスを提供することができます。また、独立することで、自分のスタイルで働くことができる自由さも得られます。
行政書士に向いている人は書類作成が苦にならない人
「事務作業が好き」
「役所の対応にイラっとしない」
「夢を一緒に叶えたい」
そんな方には、行政書士にピッタリです!
事務作業が好きな人
行政書士の主な仕事は、書類の作成です。行政書士の業務範囲は幅広く多岐に渡り、種類も1万種類に及びます。内容も、許認可関係や権利関係など、顧客にとって重要な申請であることから、決められた様式に必要事項を漏れなく正確に記入しなければなりません。
「決められたことを決められたとおりにやる」
これはネガティブなことではなく、行政書士として必要不可欠な基礎となるところです。顧客への付加価値の提供も大切ですが、基礎があってのことです。
役所のクセに付き合える人
行政書士の仕事は、書類を書いて終わりではありません。書類を書いて、役所に提出して、受理されなければ意味がありません。
書類の種類の多さもさることながら、提出先の役所も千差万別です。同じ書類でも役所によって書き方が異なることもざらにあるため、役所の対応にいちいちイラっとしていたらキリがありません。
行政書士が果たすべき「受理」というミッション達成に向け、寛容な気持ちでクセのある役所の担当者と補正作業のキャッチボールに付き合う必要があります。
顧客ファーストを考えられる人
行政書士の仕事は、顧客の情報を正確に書類に反映し、役所に提出することです。いわば「縁の下の力持ち」です。
顧客が求めているニーズに耳を傾け、書類を通じて、役所へ橋渡しをする必要があります。
「顧客の夢をともに叶える」
そんな顧客ファーストを考えられる気概を持った人にピッタリです。
行政書士になることに過度な期待は禁物
「地道な努力を続ける必要がある」
行政書士は、法律や行政手続きの専門家であるため、専門的な知識や能力が必要です。
日々目まぐるしく変わる社会情勢や法改正に対応した最新の情報を常に更新し、顧客に対し、適切なアドバイスを提供する責任があります。
行政書士は、単なる資格取得に留まることなく、実務経験や知識の幅を広げるための勉強や研修、情報収集など、地道な努力を続けることが大切です。
行政書士になる方法は試験に合格して登録するだけ
行政書士になる方法の一般的な流れは以下のとおりです。
1 行政書士試験
行政書士試験は、行政書士法に基づき実施する国家試験で、毎年1回(11月)実施されます。
試験科目は、憲法、行政法、民法、商法、基礎法学、そして一般知識です。
試験は筆記試験で、受験料は約1万円です。
2 行政書士登録
行政書士試験に合格したら、行政書士登録を行います。
行政書士になるためには、次の主な登録要件を満たす必要があります。
・行政書士試験に合格すること
・未成年者ではないこと
・日本国籍または在留資格があること
ちなみに、行政書士試験は、年齢、学歴、国籍等に関係なく、誰でも受験できます。
登録には、日本行政書士会連合会が備える行政書士名簿への登録を受けなければなりません。
行政書士名簿への登録を受けるためには、行政書士事務所を開設しようとする都道府県の行政書士会を通じて必要な書類を提出し、行政書士会に入会する必要があります。
登録にかかる費用は、地域により多少異なりますが、登録手数料、入会金、その他の費用を合わせて合計30万円程度かかります。
行政書士は150年の歴史のある由緒正しき士業
・1872年:太政官達「司法職務定制」による代書人制度の発足
行政代書人が登場し、行政官庁と密接に関わる業務に従事するようになる。
・1951年:行政書士法の制定
代書人制度が廃止され、現在の行政書士制度がスタートする。
行政書士は、民間人が行政手続きに必要な文書の作成や手続きの代理を行うことができる法律の専門家として認められるようになる。
・1953年:行政書士会の発足
行政書士の業務の正当な実施や職業倫理の維持・向上を目的に、行政書士法に基づく自主的な組織として発足する。
ちなみに、行政書士のバッジは、「調和・謙虚・乙女の純真」の花言葉を持つコスモスの花の中に行政書士の「行」の文字があしらわれています。
まとめ
●行政書士は「頼れる街の法律家」で、仕事内容は書類の作成・書類提出の代理・法律の相談
●行政書士は、他の資格とは異なる専門性を持ち、法律に基づいた手続きや書類作成がメイン
●行政書士になると独立開業や就職・転職で幅が広がるが、地道な努力を続ける必要があるため、過度な期待は禁物
●行政書士試験は誰でも受験できるため、チャンスは誰の手にもある
●行政書士は古く昔からある歴史ある「国家資格」