子ども向けの習い事の勧誘を受けたことがあります。
はじめは私が話を聞いていました。でも、途中から様子が変わりました。私では話にならないと見たのでしょう。 担当の方は、そばにいた子どもに直接話しかけはじめたのです。
おもちゃを出してきて、見せながら話していました。
結局、私は「おつかれさまです。」と言って、その場を終わりにしました。あまり上手な断り方ではなかったと思います。話は長くなりましたが、穏便に終えることはできました。
助かったのは、日ごろから子どもと話していたことがあったからだと思います。
タダほどこわいものはない。
わが家で、何度も口にしてきた言葉です。それが、あのとき防波堤になってくれた気がします。
ただ、子どもは、もらえるはずだったものがもらえず、残念そうでした。
もし、あのとき断りきれずに契約していたら、どうなっていたでしょうか。
そこで出てくるのが、クーリングオフです。
この記事で分かること
- 自分の契約で、クーリングオフが使えるかどうか(ここがいちばん大事です)
- 使えるときの通知のしかた(2022年6月から、メールでもできるようになりました)
- 使えなかったときに、ほかにできること
手続きのやり方だけ見たい方は、使えるときの手続きへ飛んでください。もう使えないと分かっている方は、使えないときにできることへどうぞ。
条文について
この記事に出てくる条文は、すべて特定商取引法(正式には特定商取引に関する法律)のものです。原文は、e-Gov法令検索で読めます。2026年10月時点の内容で確認しました。
先に、いちばん大事なことを書きます。
クーリングオフは、どんな買い物にも使える制度ではありません。
私も、調べはじめるまで分かっていませんでした。「8日以内なら、何でも返せる」くらいに思っていた気がします。実際は、まったく違いました。
使えるかどうかを見分ける
ここを飛ばして手続きの説明に進むと、全部読んだあとで「自分は使えなかった」と分かることになります。先に確かめてください。

ネットで買ったものには使えません
いちばん先に、これを書いておきます。
国民生活センターは、こう書いています。
通信販売には、クーリング・オフ制度はありません。
※ 国民生活センター「クーリング・オフ」より
通信販売というのは、ネット通販のことです。お店のサイトで買ったもの、アプリの中で課金したもの、SNSの広告から申し込んだもの。これらは、ほぼ全部ここに入ります。
子どもや若い人が契約する場面の多くが、まさにこれだと思います。
なぜ通信販売は外れているのか
理由は、制度の成り立ちにあります。
クーリングオフは、もともと「自分から買いに行ったわけではない契約」を想定して作られた仕組みです。家に来られた、電話をかけられた、道で声をかけられた。不意打ちで、考える時間がなかった契約を、あとから考え直せるようにするためのものです。
ネット通販は、自分で検索して、自分で選んで、自分でボタンを押しています。不意打ちではない、という整理になっています。
納得できるかどうかは別として、そういう考え方で線が引かれているということです。
代わりにあるのは返品の決まり
では、ネット通販で買ったものは、一切返せないのでしょうか。そうとも限りません。
特定商取引法の第15条の3に、こう書かれています。
特定商取引法 第15条の3第1項(抜粋)
…その売買契約に係る商品の引渡し…を受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除…を行うことができる。ただし、当該販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合…には、この限りでない。
特定商取引法 第15条の3第2項
申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡し…が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、購入者の負担とする。
まとめると、こうなります。3つとも、条文に書かれています。
- お店が返品の決まりを広告に書いていれば、その決まりに従う(第1項ただし書「この限りでない」)
- 何も書いていなければ、商品を受け取った日から8日以内なら返せる(第1項本文)
- そのときの送料は自分持ち(第2項「購入者の負担とする」)
クーリングオフとは別のものです
名前が似ていないので分かりにくいのですが、この8日間は、クーリングオフではありません。
条文の置き場所からして、別のものです。第9条のまわりがクーリングオフ、第15条の3が通信販売の返品です。
ここが頭の中で混ざりやすいので、並べて見比べられる形にしておきます。
- どんな契約か
クーリングオフ:訪問販売・電話勧誘など
通信販売の返品:ネット通販・カタログ通販 - 日数の数えはじめ
クーリングオフ:書面を受け取った日
通信販売の返品:商品を受け取った日 - お店のルールで打ち消せるか
クーリングオフ:打ち消せない(第9条第8項)
通信販売の返品:打ち消せる(第15条の3第1項ただし書) - 送料を持つのは
クーリングオフ:お店(第9条第4項)
通信販売の返品:自分(第15条の3第2項) - 使ったあとは
クーリングオフ:使った分も請求されない(第9条第5項)
通信販売の返品:返品そのものが難しくなる
覚えることは、ひとつでいいと思います。
クーリングオフは、法律が守ってくれる制度です。お店の都合では打ち消せません。
通信販売の返品は、お店が決めている条件です。何も書いていなかったときだけ、法律が8日間を用意してくれます。
つまりネット通販では、「返品できるかどうかは、お店が決めている」ということになります。守りの強さが、まるで違います。
買う前には読まない返品の決まり
ここで、正直な話を書かせてください。
私も、ネット通販で返品をしたことがあります。でも、買う前に「何日以内か」を確認したわけではありませんでした。 商品が届いて、中身を見て、返す必要が出てきてから、はじめて調べました。
そして、その案内が分かりにくいところにありました。
お店のほうも、積極的に書いてくれているわけではありません。小さな文字で、ページのいちばん下にあったりします。
たぶん、多くの人がそうなのだと思います。 買う前に返品の決まりを読む人は、あまりいません。
だからこそ、「買ったあとに探す」という前提で、どこを見ればいいかを覚えておくほうが現実的かもしれません。探す場所は、この記事の後半の返品の決まりを探すに書きました。
使えるのはこんな買い方
では、クーリングオフが使えるのはどんな契約でしょうか。
買ったときの場面から引けるように並べました。子どもや若い人に関わりやすいものを先に出しています。
- 家に来られた/道で声をかけられた/「当選しました」と呼び出された
制度の名前:訪問販売
期間:8日 - 電話がかかってきた
制度の名前:電話勧誘販売
期間:8日 - エステ・脱毛・語学教室・学習塾などに通う契約をした
制度の名前:特定継続的役務提供
期間:8日 - 友達や先輩から「いい話がある」と誘われた
制度の名前:連鎖販売取引(マルチ商法)
期間:20日
冒頭に書いた習い事の勧誘も、自宅に来られていれば訪問販売に当たる可能性があります。
「特定継続的役務提供」は長い名前ですが、中身は7つに決められています。エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスです。
全部で7つあります
ほかにもあるので、全体を並べておきます。根拠になる条文も一緒に書きました。
- 訪問販売(キャッチセールス、アポイントメントセールスを含む)
期間:8日
どの条文に書いてあるか:特定商取引法 第9条 - 電話勧誘販売
期間:8日
どの条文に書いてあるか:特定商取引法 第24条 - 特定継続的役務提供(エステ・脱毛・語学教室・学習塾など)
期間:8日
どの条文に書いてあるか:特定商取引法 第48条 - 訪問購入(業者が家に来て、買い取っていくもの)
期間:8日
どの条文に書いてあるか:特定商取引法 第58条の14 - 連鎖販売取引(マルチ商法)
期間:20日
どの条文に書いてあるか:特定商取引法 第40条 - 業務提供誘引販売取引(内職商法・モニター商法)
期間:20日
どの条文に書いてあるか:特定商取引法 第58条 - 通信販売(ネット通販)
期間:なし
どの条文に書いてあるか:※特定商取引法 第15条の3に、別の返品の決まり
※ 取引の呼び方は、消費者庁「特定商取引法ガイド」に合わせています
20日のものが2つあるのは、覚えておくと役に立つかもしれません。マルチ商法と内職商法は、気づくまでに時間がかかりやすいからだと思います。
期間は契約した日からではありません
ここを間違えている人が多い気がします。私も勘違いしていました。
国民生活センターの説明です。
クーリング・オフ期間は、申込書面または契約書面のいずれか早いほうを受け取った日から起算します。
※ 国民生活センター「クーリング・オフ」より
契約した日ではなく、書面を受け取った日です。その日を1日目として数えます。
その場で書面をもらっていれば同じ日になりますが、あとから郵送されてきた場合は、ずれます。

書面に不備があるとき
もうひとつ、大事なことがあります。
書面の記載内容に不備があるときは、所定の期間を過ぎてもクーリング・オフできる場合があります。
※ 国民生活センター「クーリング・オフ」より
法律は、書面に何を書かなければならないかを細かく決めています。それが欠けていると、期間の数えはじめが成立していないという考え方です。
もう過ぎたと思っても、手元の書面を一度見てみてください。
使えない場合もあります
対象の取引であっても、使えないことがあります。消費者庁が挙げているのは、こういう場合です。
使うと商品価値がほとんどなくなる、いわゆる消耗品(いわゆる健康食品、化粧品等)を使ってしまった場合や、現金取引の場合であって代金又は対価の総額が3000円未満の場合には、クーリング・オフの規定が適用されません
※ 消費者庁「特定商取引法ガイド 訪問販売」より
- 使ってしまった消耗品(健康食品、化粧品など)
- 現金で払って、総額3,000円未満のもの
化粧品や健康食品は、ここに引っかかりやすいところです。「とりあえず1つ開けてみよう」が、取り返しのつかない一手になることがあります。
届いた箱は、決めるまで開けない。 これだけで、選べる道が増えます。
使えるときの手続き
ここからが、実際にやることです。
いまはメールでもできます
2022年6月1日から、大きく変わりました。
それまでは書面でしか認められていませんでしたが、いまは電磁的記録でもできます。法律の条文にも、はっきり書かれています。
特定商取引法 第9条第1項(抜粋)
…申込者等は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によりその売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回又は…を行うことができる。
「電磁的記録」というのは、消費者庁の説明によれば、こういうものです。
- 電子メール
- お店が自分のサイトに用意しているクーリングオフ専用のフォーム
- USBメモリなどの記録媒体
- FAX
※ 消費者庁「特定商取引法における電磁的記録によるクーリング・オフに関するQ&A」A1より
「書面だけ」と言われても無効です
もし業者から「クーリングオフは書面でしか受け付けません」と言われたら、どうなるでしょうか。
消費者庁が、はっきり書いています。
事業者において一方的に通知の方法を不合理なものに限定すること…はクーリング・オフの方法を制限する消費者に不利な特約に該当し、無効となるもの(特定商取引法第9条第8項等)と考えられます
※ 消費者庁「電磁的記録によるクーリング・オフに関するQ&A」A2より
根拠の条文は、たった一文です。
特定商取引法 第9条第8項
前各項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする。
法律に反する「うちのルール」は、効きません。 同じ趣旨の条文が、ほかの取引にも置かれています。
メールで出すとき
いちばん手軽です。お金もかかりません。
まず、契約書を見てください。 電子メールでの通知先や方法が書いてあれば、それに従います。
書く内容は、こうです。
- 契約した年月日
- 契約した人の名前
- 商品やサービスの名前
- 契約金額
- この通知を出す日
- 契約を解除する、という一文
※ 消費者庁「電磁的記録によるクーリング・オフに関するQ&A」A4より
件名に「クーリングオフの通知」と入れておくと、相手も処理しやすいと思います。
そして、いちばん大事なことがあります。
送信したメールを、消さずに保存してください。
専用フォームから送った場合は、送信後の画面をスクリーンショット(画面の写真)で残しておきます。
やり方を書いておきます。
- Windowsのパソコン
Windowsキー+Shift+S - Macのパソコン
command+shift+3(画面全体) - iPhone
側面のボタンと音量を上げるボタンを同時に押す - Android
電源ボタンと音量を下げるボタンを同時に押す
※ 機種によって違うことがあります。うまくいかないときは、画面を別のスマホやカメラで撮るのでも構いません。残すことが目的です
メールの文例
そのままコピーして使える形にしました。○○の部分だけ、ご自分のものに置き換えてください。
件名
クーリングオフの通知(契約者 ○○○○)
本文
株式会社△△△△ 御中
次の契約を解除します。
契約年月日:○○年○月○日
商品名:○○○○○
契約金額:○○,○○○円
担当者:□□様
この通知を出した日:○○年○月○日
住所:○○県○市○町○丁目○番○号
氏名:○○○○
電話:000-0000-0000
※ 書く項目は、消費者庁「特定商取引法における電磁的記録によるクーリング・オフに関するQ&A」A4と、国民生活センター「クーリング・オフ」が挙げているものに合わせています。文面は読みやすく整えたものです
見た目をきれいにそろえようとしなくて大丈夫です。
空白をたくさん入れて、項目の先を縦一列にそろえたくなるかもしれません。でも、それはやめておくほうが無難です。
メールは、受け取った人の画面の大きさや文字の設定によって、行の折り返し方が変わります。こちらの画面でそろって見えていても、相手の画面では位置がずれて、かえって読みにくくなることがあります。
上の文例のように「契約年月日:○○年○月○日」と、項目のうしろに「:」を置いて1行ずつ書けば、どんな画面でも意味が通ります。そろっていなくても、伝わればいいのです。
はがきで出すとき
メールが使えない場合や、相手がちゃんと受け取ったかどうかを確かめたい場合は、はがきを使います。
国民生活センターの案内です。
送付する前に、はがきの両面をコピーしておきましょう。「特定記録郵便」または「簡易書留」など、発信の記録が残る方法で代表者あてに送付し、コピーや送付の記録は一緒に保管しておきましょう。
※ 国民生活センター「クーリング・オフ」より
押さえるのは3つです。
- 出す前に両面をコピーする
- 特定記録郵便か簡易書留で出す(記録が残ります)
- あて先は代表者あて。名前が分からなければ「代表者様」で構いません
はがきの書き方
はがきの裏(通信面)に、この形で書き写してください。 実際の並びに近づけてあります。

通知書
次の契約を解除します。
契約年月日 ○○年○月○日
商品名 ○○○○○
契約金額 ○○,○○○円
販売会社 株式会社××××
□□営業所
担当者 △△△△
支払った代金○○,○○○円を返金し、
商品を引き取ってください。
○○年○月○日
○○県○市○町○丁目○番○号
氏名 ○○○○
※ 国民生活センター「クーリング・オフ」の記載例をもとに作成
書いてあることは、メールとほとんど同じです。表題を「通知書」にすることと、最後に日付と住所・氏名を置くことを押さえておけば大丈夫だと思います。
きれいに書けていなくても大丈夫です。 大事なのは、契約が特定できることと、期間内に出すことです。
手元の商品はどうするか
見本に「商品を引き取ってください」と書きましたが、自分から送り返す必要はありません。
条文に、こう書かれています。
- 商品の引き取りにかかる費用は、業者の負担(特定商取引法 第9条第4項)
- 業者は、損害賠償や違約金を請求できない(同 第9条第3項)
つまり、業者が引き取りに来るのを待てばいいということです。送料を立て替える必要もありません。
それまでの間は、こうしておくのが無難だと思います。
- 箱や包装は捨てずに、そのまま取っておく
- 使わない(食品・化粧品・健康食品は、開けただけでも扱いが変わることがあります)
- 置き場所は、自宅の普通の場所で構いません。特別な保管は求められていません
食品や化粧品のような「使うと価値がなくなるもの」は、使ってしまうとクーリングオフの対象から外れることがあります(前に書いたとおりです)。届いた箱は、決めるまで開けないのがいちばん安全です。
なかなか引き取りに来ない、置き場所に困る。そういうときは、自己判断で処分せず、消費者ホットライン「188」に聞いてみてください。
はがきで出すときの料金
ここは、あまり書かれていないので調べました。
| 出し方 | 料金 |
|---|---|
| 通常はがき | 85円 |
| はがき+特定記録郵便 | 85円+210円=295円 |
| はがき+簡易書留 | 85円+350円=435円 |
| メール | 0円(※通信量のみ) |
※ 日本郵便「国内の料金表(手紙・はがき)」「オプションサービス」より(2026年10月時点)
※ メールの「0円」は、送ることそのものにお金がかからないという意味です。スマホの通信量は少し使いますが、文字だけのメール1通であれば、ごくわずかです
封筒は要りません。 はがきのまま、郵便局の窓口に出せます。特定記録郵便も簡易書留も、はがきに付けられるためです。かかるのは、上の表の金額だけです。
ただし、郵便ポストに入れるのではなく、窓口に出してください。 特定記録郵便と簡易書留は、窓口で受け付けてもらうものだからです。控えは、その場で渡されます。
もうひとつ、知っておくと役に立つかもしれないことがあります。内容証明郵便は、はがきでは使えません。 こちらは手紙(封書)だけに付けられるもので、封筒と、同じ文面の控えが2通必要になります。
公的な資料に「特定記録郵便、書留、内容証明郵便など」と並んでいることがありますが、これは、はがき以外で出す場合も含めた書き方です。はがきで出すなら、特定記録郵便か簡易書留の二択になります。
どちらを選べばいいか
私の考えは、こうです。
基本はメール。相手が受け取ったか不安なときは、はがき。
メールなら、時間の手間も、郵送のお金もかかりません。契約書にメールでの通知先が書いてあるなら、なおさらです。
ただ、相手がきちんと受け取ったかどうかが分からない場面はあると思います。返事が来ない、電話もつながらない。そういうときは、配達の記録が残るはがきを選ぶ理由があります。
295円や435円は、記録を買う代金だと考えると納得しやすいかもしれません。
クレジットカードで払ったとき
見落としやすいところです。
クレジット契約をしている場合は、販売会社とクレジット会社に同時に通知します。
※ 国民生活センター「クーリング・オフ」より
両方に出してください。 販売会社だけに出しても、カード会社からの請求は止まりません。
クレジット会社あての見本も置いておきます。販売会社あてとの違いは2つだけです。クレジット会社の名前を1行足すことと、返金と引き取りを求める一文を入れないことです。
通知書
次の契約を解除します。
契約年月日 ○○年○月○日
商品名 ○○○○○
契約金額 ○○,○○○円
販売会社 株式会社××××
□□営業所
担当者 △△△△
クレジット会社 △△△△△株式会社
○○年○月○日
○○県○市○町○丁目○番○号
氏名 ○○○○
※ 国民生活センター「クーリング・オフ」の記載例(クレジット会社あて)をもとに作成
メールで出す場合の文例も置いておきます。販売会社あてとは、本文が少し違います。
件名
クーリングオフの通知(契約者 ○○○○)
本文
△△△△△株式会社 御中
次の契約を解除しましたので、お知らせします。
立替金の請求を止めてください。
契約年月日:○○年○月○日
商品名:○○○○○
契約金額:○○,○○○円
販売会社:株式会社×××× □□営業所
クレジット会社:△△△△△株式会社
この通知を出した日:○○年○月○日
住所:○○県○市○町○丁目○番○号
氏名:○○○○
電話:000-0000-0000
販売会社あてとクレジット会社あては、同じ日に、2通とも出してください。
書類は5年とっておく
送付の記録や関係書類は、少なくとも5年間保管してください。
※ 国民生活センター「クーリング・オフ」より
長いと感じるかもしれませんが、あとで話が蒸し返されることもあります。
写真やPDFで残しても構いません。 保管のしかたに決まりはなく、国民生活センターの案内にも「どんな形で」とは書かれていません。大事なのは、必要になったときに中身を見せられることです。
- はがきは、出す前に両面を写真に撮る(コピー機がなくても大丈夫です)
- 郵便局でもらう控えも、写真に撮っておく
- メールは、送信済みのフォルダに残したままにしておく
- スマホの写真は消えることがあるので、メールで自分に送っておくなどの二重の備えがあると安心です
ただし、紙の原本も、場所を取らないものは残しておくほうが無難だと思います。郵便局の控えは小さな紙切れです。ひとつの封筒にまとめて入れておけば、それで足ります。
期間を過ぎたあとの例外
ここが、この記事でいちばん伝えたいところかもしれません。
8日や20日を過ぎていても、クーリングオフができる場合があります。
クーリング・オフができないと事業者が言ったり、脅したりしてクーリング・オフができなかった場合には、所定の期間を過ぎてもクーリング・オフができます。
※ 国民生活センター「クーリング・オフ」より
これは、条文にも書かれています。
法律が想定している2つの場面
- 業者が事実と違うことを告げた(不実告知)
- 業者がおどして困らせた(威迫)
このせいで期間内に手続きできなかったときは、期間の経過が効きません。
※ 特定商取引法 第9条第1項ただし書ほか
「クーリングオフはできない決まりです」と業者に言われて引き下がった。もしそうなら、その言葉そのものが、期間を止める理由になり得ます。
ただ、これに当たるかどうかは、自分では判断がつきにくいところだと思います。そういうときは、消費者ホットライン「188」に電話してみてください。お住まいの地域の消費生活センターにつながり、使えるかどうかを一緒に見てもらえます。
連絡先は、この記事の困ったときの相談先にまとめてあります。
使えないときにできること
クーリングオフが使えなかった。それでも、できることは残っています。
返品の決まりを探す
ネット通販の場合、まず探すのはここです。
「特定商取引法に基づく表記」
買ったサイトの、たいていはいちばん下にあります。小さな文字で、ほかのリンクに紛れています。「会社概要」や「ご利用ガイド」の中に入っていることもあります。
ここに、返品できるかどうか、何日以内か、送料は誰が持つかが書かれています。

何も書かれていなければ、さきほどの8日間の決まりが使えます。商品を受け取った日から数えて8日以内です。
このときの送料が自分持ちになるのは、特定商取引法第15条の3第2項に「その引取り又は返還に要する費用は、購入者の負担とする」と書かれているためです。法律がそう決めているので、お店が不親切なわけではありません。
なお、クーリングオフが使える契約なら、ここは逆になります。費用はお店が持ちます(特定商取引法第9条第4項)。
定期購入になっていないか確かめる
もうひとつ、確かめてほしいことがあります。
「初回だけ安い」という買い方をしていた場合、何回か買い続ける約束になっていることがあります。1回で終わるつもりが、2回目から高い金額で届き続ける形です。
このしくみについては、改めて1本の記事にするつもりです。「初回500円」と書かれた広告のどこを見れば回数の約束に気づけるのか、2回目が届く前に止められるのか、止められなかったときにどうするのかを、相談の実例と条文にあたって書く予定です。
ここでは「初回が安かったら、回数の約束がないかを見る」とだけ覚えておいてください。
使えるときは全額戻ります
その前に、ひとつはっきりさせておきます。
クーリングオフが使える場合は、払ったお金は返ってきます。 しかも、法律がそこまで決めています。
クーリングオフしたあとに起きること(訪問販売の場合)
- 解約にともなう損害賠償や違約金を請求されません(特定商取引法 第9条第3項)
- 業者が受け取っているお金は、速やかに返さなければなりません(同 第9条第6項)
- 商品を使ったあとでも、使った分の代金を請求されません(同 第9条第5項)
- 商品の引き取りや返送にかかる費用は、業者の負担です(同 第9条第4項)
ここまで徹底している制度は、あまりないと思います。「考え直す時間」を、本気で守ろうとしているということなのでしょう。
ですから、ここから先に書くのは、クーリングオフが使えなかった場合の話です。
いちばんの敵は「もったいない」
ここからは、法律の話ではありません。
やめたほうがいいと分かっていても、できないことがあります。私にも、あります。
「もう少し使えば、元が取れるかもしれない」「ここまで払ったのに、いまやめたら全部むだになる」
そう思って、使っていないサービスをそのままにしていた時期がありました。使っていないのだから、やめれば出ていくお金は減ります。頭では分かっていても、解約の手続きに向かう気になれませんでした。
やめること自体が、損をする決断のように感じてしまうのだと思います。
見るのはこれから払う金額
クーリングオフが使えない。でも、契約はこれからも続く。そういう場面の話です。
月々払いの契約が残っている。回数の約束がある定期購入が、まだ何回か残っている。
このとき、判断を分けるのは、これから先に払う金額です。
すでに払ったぶんは、やめても続けても、同じように出ていきます。だから、比べる材料になりません。「ここまで払ったのだから」と思って続けると、これから出ていくお金が増えることになります。
それでも割り切れないとき
とはいえ、これは理屈です。
さきほど書いたとおり、私も同じところで足が止まります。「もう少し使えば元が取れる」と考えてしまうのは、ケチだからでも、計算が苦手だからでもないと思っています。
払ったぶんを無駄にしたくないという気持ちは、ごく自然なものです。だから、割り切れない人を責める気持ちは、まったくありません。
ただ、ひとつだけ覚えておいてもらえたらと思うことがあります。
やめても、過去は変わりません。でも、これから先は変わります。
「もったいない」と思うこと自体は、悪いことではありません。その気持ちを、過去に払ったお金ではなく、これから払うお金のほうに向けてみる。 それだけで、だいぶ決めやすくなる気がしています。
それでも気が進まないときは、誰かに言ってみるところからでいいと思います。家族でも、消費者ホットライン「188」でも構いません。ひとりで決めなくていいのです。
困ったときの相談先
ひとりで判断がつかないときは、相談できます。
国民生活センターの案内が、やさしい書き方をしていました。
クーリング・オフができる取引かどうか不明なときや、書き方や手続き方法が分からないときは、悩まず、すぐにお近くの消費生活センター等へ相談しましょう。
※ 国民生活センター「クーリング・オフ」より
悩まず、すぐに。 公的な文章にしては、めずらしく急かす書き方だと思いました。それだけ、間に合わなくなる人が多いのかもしれません。
- 使えるかどうか分からない
消費者ホットライン 188 - 書き方が分からない
消費者ホットライン 188 - 法的な手段を考えたい
法テラス 0570-078374(使える制度と専門家を教えてくれます)
※ 相談そのものは無料です。ただし188や0570で始まる番号は通話料がかかります
この番号は、SNSトラブルについてまとめた記事でも案内しています。
子どもへ
ここから下は、お子さん本人に読んでもらえたらと思って書きます。中学生から高校生くらいを思い浮かべて書きました。
18歳より前はもっと強い守りがある
先に、大事なことを書いておきます。
18歳になっていない人が、親の同意なしに何かを契約した場合、クーリングオフを使うまでもなく、契約そのものを取り消せる可能性があります。 民法の第5条という条文に書かれている仕組みで、「未成年者取消権」と呼ばれています。
- 8日や20日の期限がありません
- 訪問販売かネット通販かも、関係ありません
- 「考え直す制度」ではなく、契約そのものをなかったことにする仕組みです
ですから、18歳より前の人がまずやることは、手続きではありません。家の人に言うことです。
ただし、年齢をごまかして契約した場合など、取り消せないことがあります。そこも含めて、大人に見てもらうのがいちばん早いと思います。
くわしくは、18歳でできること・できないこと一覧に書きました。
18歳からはクーリングオフが頼り
18歳になると、その取り消しは使えなくなります。
代わりに残るのが、クーリングオフです。年齢に関係なく使えます。ただし、期限があります。 ここから下の話が、そのまま関わってきます。
断り文句はひとことでいい
うまく断ろうとしなくて大丈夫です。
私が使ったのは、「おつかれさまです。」でした。それだけです。理由も言っていません。
理由を言うと、そこを崩されます。「お金がない」と言えば「分割できます」と返ってきますし、「忙しい」と言えば「5分だけ」と返ってきます。
理由を言わない断り方のほうが、たぶん強いです。
「いま決められないので、また連絡します」でもいいと思います。大事なのは、断ることそのものより、その場で決めないことかもしれません。

言い負かさなくていい
もうひとつ、伝えておきたいことがあります。
相手と戦う必要はありません。
おかしいと思っても、言い返して納得させようとしなくていいのです。相手は何百回と同じ話をしています。こちらが1回考えて出した言葉は、たいてい用意された返事で崩されます。言い合いになるほど、その場に長くいることになります。
勝たなくていいし、分かってもらわなくてもいい。その場から離れれば、それで勝ちです。
逃げるのは、負けではありません。戦わずに離れるのは、立派な方法のひとつだと思っています。
- 立ち止まらない
- 連絡先を渡さない
- その場でサインしない
- 「おつかれさまです」と言って歩き出す
これだけで、ほとんどの場面は終わります。
タダには続きがある
無料のおもちゃ、無料の体験、無料のプレゼント。
くれる人には、くれる理由があります。もらった時点で、「もらったから、少しは聞かないと」という気持ちが生まれます。相手は、それを知っています。
タダほどこわいものはない。
わが家で何度も話してきた言葉です。言い方は何でもいいのですが、この感覚だけは持っていてほしいと思っています。
困ったら家の人に言う
もし何か契約してしまったとしても、早く言うほど、できることが多く残っています。
8日や20日という期限があるからです。黙っている間に、その日数は減っていきます。
言いにくいのは、よく分かります。叱られると思うからだと思います。それでも、時間だけは買い戻せません。
おわりに
話してくれてありがとう
ここは、親の側に向けて書きます。
もし子どもが「契約しちゃった」と言ってきたら、私がまず言いたいのは、話してくれてありがとうです。
叱るのは、そのあとでもできます。でも、話してもらえなかったら、何も始まりません。
そのあとは、子どもと一緒に、いま何がどうなっているのかを確かめたいと思います。いつ契約したのか、書面はあるのか、いくら払ったのか。そのうえで、取れる手立てを一緒に考える。
ひとりで抱えさせないことが、たぶんいちばん大事なのだと思います。
お金の請求が来てしまった場合にどう動くかは、子どものゲーム課金と返金について書いた記事に詳しく書きました。
18歳から減るお守り
もうひとつ、知っておいていただきたいことがあります。
17歳までは、親の同意なしに結んだ契約をあとから取り消せる仕組みがありました。18歳になると、それが使えなくなります。
でも、クーリングオフは年齢に関係なく使えます。 18歳でも、19歳でも、大人になってからも同じです。
守りがひとつ減ったあとに残る、数少ない手段のひとつだと言えるかもしれません。
18歳で何が変わり、何が20歳のままなのかは、18歳でできること・できないこと一覧にまとめています。
子どもの期待を使わないこと
最後に、冒頭の話に戻らせてください。
あのとき、担当の方は子どもにおもちゃを見せました。そして私が断ったあと、子どもは残念そうな顔をしていました。あの顔を見るのは、親としてなかなかこたえました。
子どもの期待値を上げておいて、そのあとで下げる。 そういうことは、してほしくないと思っています。
大人同士の話を進めるために、子どもを使わないでほしい。
法律の話をずっと書いてきましたが、本当に書きたかったのは、ここかもしれません。クーリングオフは、使わずに済むならそれがいちばんです。その場で断れたほうが、ずっといい。
そのために渡せるものは、たぶん多くありません。「タダほどこわいものはない」という感覚と、「困ったら言っていい」という安心くらいだと思います。
それでも、その2つがあれば、たいていのことは何とかなる気もしています。

なお、ここに書いたのは制度や条文の一般的な説明です。実際にトラブルが起きている場合や、個別の事情がある場合は、専門家や相談窓口を頼ってください。
参考にした情報
- e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」(第9条・第15条の3・第24条・第40条・第48条・第58条・第58条の14)
- 国民生活センター「クーリング・オフ」(2022年6月1日更新)
- 消費者庁「特定商取引法ガイド」
- 消費者庁「特定商取引法ガイド 訪問販売」
- 消費者庁「特定商取引法ガイド 通信販売」
- 消費者庁「特定商取引法ガイド 電話勧誘販売」
- 消費者庁「特定商取引法ガイド 連鎖販売取引」
- 消費者庁「特定商取引法ガイド 特定継続的役務提供」
- 消費者庁「特定商取引法における電磁的記録によるクーリング・オフに関するQ&A」
- 日本郵便「国内の料金表(手紙・はがき)」
- 日本郵便「国内の料金表(オプションサービス)」
※ この記事の内容は2026年10月時点の情報です。制度や料金は変わることがあります。